時言

「やまゆり園事件」を生み出す土壌

2016年7月の相模原障害者施設「津久井やまゆり園」で、元職員が19人の障害者を次々刺殺した事件はまだ記憶に新しい。
犯人は「障害者には生きる価値がない」と述べていた。
この事件が局地的な一過性の事件であればと多くの人が思っていたであろう。

衆議院議員の杉田水脈が雑誌で「LGBTのカップルに税金を使うことに賛同を得られるものでしょうか。彼らは子供を作らない、つまり生産性がない」と書いた。

障害の有無や人種などを基準に人に優劣をつけようという優生思想は、経済力や運動能力などの〝生産性〟がなければ「生きる価値がない」という考え方に結びつきやすい。
障害者や高齢者だけでなく、病気で思うように働けない人、他人と異なる特徴がある人など、生産性で人間の価値が量られる社会に生きづらさを感じている人たちは多い。

障害者雇用促進法の改正で障害者の法定雇用率は引き上げられた。
行政機構については企業よりも高い雇用率を義務付けている。
ところが中央省庁の障害者6,900人のうち3,000人超、約半数が障害者の基準を満たさない、いわゆる水増しだったことが判明した。
自治体も47都道府県の半数を超える28県で水増しがあった。

障害者虐待防止法に基づく、平成29年度の障害者虐待状況が公表された。
使用者による障害者への虐待は、通報・届出及び虐待が認められた事業所数、障害者数も増え続けている。
最低賃金に満たない給与しか払っていないなどの経済的虐待や身体的虐待、心理的虐待、性的虐待である。

やまゆり園事件を生み出す土壌はかなり根深い。


2018年8月

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