時言
技能実習制度の“虚”と“実”
政府は2019年4月にも外国人労働者向けに新たな在留資格をつくる方針だという。
最長5年間の技能実習を修了した外国人に、さらに最長で5年間(合計で10年間)、就労できる資格として「特定技能(仮称)」を新設し、移行できるようにする。
5年間を過ぎれば帰国してしまう人材を就労資格で残し、介護、農業、建設など深刻な人手不足の業界に対処しようというのだ。
試験に合格すれば、家族を招いたり、より専門性が高くて在留期間の更新ができる既存の在留資格への切り替えもできるとする。
そもそも政府は単純労働者の受け入れを原則認めていない。
しかし、技能実習制度は事実上単純労働者の受け皿となっている。
実習生は、2017年12月時点で、中国、ベトナムなどアジア圏を中心に約27万人に上る。
技能実習生の増加などがけん引し、外国人労働者は127万人と過去最高を更新、日本の労働力の50人に1人は外国人が担う状況だ。
技能実習制度は、もともと本来外国に技能を移転するという建前で作られた制度だったのだが、実態は日本の人手不足対策、単純労働受け入れ制度と化しており、今回の法改正でその方向がますます強まる気がする。
ベトナム人実習生が福島の除染作業にあたらされていたこと発覚し問題になっている。
法務省によると、2017年に賃金不払いなどの不正行為を通知した受け入れ先は200を超える。厚労省が調査した約5,600事業所の約7割で労働基準法などの違反があった(日経新聞4月18日付)。
人手不足解消のため、単純労働者の受け皿として外国人を使う、違法対策は一向に進まない。
建前と実態がここまでずれている例は珍しい。実習という建前をやめて、外国人労働者に職場移動の権利などを認める方向での法改正こそ必要だと思う。
2018年4月