時言

残業で成り立つ「世の常識」
~大雪の日の東京に思う


1.1月22日、東京は23センチの大雪に見舞われた。
多くの会社が夕方5時~6時の定時退社としたため、その時間帯の交通機関は大混乱、拠点駅は入場規制し長蛇の列だった。
通常通り8時頃まで残業してから帰宅した人の乗った電車はガラガラだった。
もし日本が、とくに東京が本当に残業規制したら成り立たないシステムの一端を垣間見た。

2.医師が毎年5名前後過労死で亡くなっている。世の過労死を防ぐのが医師のはずなのに。
この間、杏林大病院、北里大病院など高度医療を行う特定機能病院に対する労働基準監督署の是正勧告が相次いでいる。
「36協定を超える時間外労働で、かつ、残業代も未払い」(杏林大)、
「出勤か退勤かどちらか一方のみタイムカードを打刻するよう指導されていた」(北里大)というのが常態化していたようだ。
そもそも医師は管理職だから労働時間規制の適用除外であるという「常識」が少なからぬ病院にはあるようだ。

3.政府は今回の労働基準法改正案で、医師に対する労働時間規制を「5年間猶予する」という方針である。
その理由には医師法の「医師の応召義務」(=医師は治療の求めを軽度の疲労程度では断ってはならない)との関係がある。
患者側も「医師の応召義務」は当然だと思っている。
しかし外科医は当直明けの手術は「質が低下する」と答えている。
よく考えれば、応召義務を担うべきは医療機関、医療チームであり、医師個人ではない。

4、国会で労働基準法改正案が審議されるが、なぜ労働時間規制と高度プロフェッショナル制度(専門職を残業規制の対象外とする)がセットで審議されるのかわからない。
ほとんどの企業が「働き方改革」で実施(予定含め)しているのは、「残業時間削減」「休暇取得の促進」などである(「労働経済動向調査」の結果より)。
「高度プロフェッショナル」を求めているのは経団連と大企業の一部経営者しかいないのではないだろうか。

2018年1月

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