時言

過労死と経営者の資質

【略式起訴から正式公判となった電通事件】

過労自死事件で問題となった電通。7月5日付で東京地検が法人としての電通を労働基準法違反罪で略式起訴し、一方、書類送検された電通本社管理職らは不起訴(起訴猶予)処分とされた。しかし、東京簡裁は7月12日、略式起訴とされた電通について、略式起訴は不相当と判断し、正式公判とすると決定した。

今後証拠隠滅や虚偽陳述など悪質な事案では書類送検にとどまらず、個人責任の追及や強制捜査(逮捕)なども想定される。

これまで「美徳」とされてきた長時間労働が犯罪行為につながることを経営者は認識する必要がある。

【「過労死と業務不正は同時に発生する」】

電通事件をはじめ過労死事件を数多く手掛け権威となっている川人博弁護士は、「過労死と業務不正は同時に発生する」、過労死を発生させる「経営者に無能な人が多い」と指摘する。

電通の高橋まつりさんが働いていたのはインターネット広告を扱う部署だった。電通の中でも売り上げの弱い部門であり、そうした事情が彼女に対する「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」などというパワハラに結び付いた。上層部は結局業績が第一。数字をあげられない人間は休日も休めず、定時に帰れない。「数字が人権」という言葉は、すなわち数字をとらないと人権が保障されない世界になっているということだ。

業績が上がらなければ、そこにある原因を分析し対策を打つのが経営者の役割、能力であるはずだ。長時間労働とパワハラによっては「打開」されないのである。
2017年8月

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