時言
「働き方改革」の本音と建前
平成29年3月、政府の「働き方改革実現会議決定」は、「世の中から『非正規』という言葉を一掃していく」とか、「長時間労働を自慢するかのような風潮が蔓延・常識化している現状を変えていく」などと、今回の働き方改革の意図をあたかも労働者本位に考えた抜本的施策であるかのように勇ましく述べた。
提起された改革内容でも、不十分な面も多々ありつつも、はじめて残業時間の上限規制を罰則付きで設けること、パート労働者や有期雇用労働者と正規社員との間の労働条件の差異について、「均等・均衡待遇」という理念に基づく是正を図っていくことなどを打ち出した。
ところが6月9日付で発表された「未来投資戦略2017」は、日本の成長戦略にとって「『働き方改革』が、現在の構造を温存した上で単なる長時間労働規制と非正規労働者の処遇改善だけに終始すれば、成長制約要因となってしまう」と述べたうえで、3月の実現会議決定とは違った趣の方向を打ち出した。
具体的には、①「高度プロフェッショナル制度の創設」、②「解雇の金銭解決」制度、③「雇用関係によらない働き方」の導入を柱としている。「高度プロフェッショナル制度」は、一定の年収以上の「高度専門職」に労働基準法の労働時間規制を適用しない制度。残業代も、深夜勤務も、休日出勤の割増賃金も払われない制度であるため新たな過労死の促進策ではないかと危惧されている。「解雇の金銭解決」制度は、裁判で解雇不当の判決が出ても、会社が金銭を払えば解雇が認められる仕組みを導入しようというもの。「雇用関係によらない働き方」とは、請負などの形態だから労働基準法が適用されない働かせ方を促進しようということである。
3月の決定と6月の決定とは相いれられないことは明白である。一体、どちらが本音で、どちらが建前なのか?
2017年7月