時言

障害者雇用の難しさ

【障害者雇用対策の進展】
平成30年4月より、50人以上の企業に義務づけられている障害者雇用の法定雇用率の算定基礎に精神障害者が追加されることになった。それに伴い、政府は、いくつかの対策を打ち出した。
①就労支援の推進策
・精神医療機関とハローワークとの連携強化
・職場に精神・発達障害者しごとサポーター(仮称)を養成
・精神障害者雇用トータルサポーターの体制拡充
②職場定着支援策
・障害者就業・生活支援センターの体制拡充
③がん等の疾病による長期療養が必要な労働者に対する就労支援の強化
④障害者の職業能力開発の推進

【障害者が仕事に就けるようになるまで】
一方、障害者の就労支援事業をやっておられる方々によれば、障害者が就労するまでに、まずクリアしなければならないこととして、生活リズムをつけること、体力をつけること、病気を分かり合える仲間を得ること、自らが病識を持つことが基本になるという。そのうえで、毎日事業所に来所できる状態になること、病状が安定することが次のステップになる。
現実に、就労できた後のサポートはさらに大変になる。日々の仕事を通じてトラブルが生まれたり、いじめにあったりして病状が悪化する例も多い。
【企業側が抱える大変さ】
障害者に特化した労働組合書記長が執筆した本によれば、雇用された障害者と企業との間に生まれるトラブルの結果、障害者が「わがままな加害者」になり、担当する社員が対応に疲弊して退職してしまうような例もあるという。そしてその多くは、企業側が障害に対する知識がなく、それぞれの障害者の特性を把握していないことから生まれている。こんな例が紹介されている。

担当者A:「明日の9時までに、現地に直接集合してください」
障害者B(アスペルガー症候群):「現地までは電車、バスのどちらで行けばよいですか?」
担当者A:「Bさんの都合のいい方でいいですよ」

こだわりの強いBさんは、Aさんの言う「都合のいい」が、料金が安いことか、遅刻しないことか、それ以外のことか、どれを指して「都合のいい」というのだろうと考えてしまい頭から離れなくなってしまう。結果的に、Bさんは、障害に配慮のないAさんに失望し、どうせ現地に行ってもつらい思いをするだけだと、現地に行かなかった。もし指示するときに、「8時50分に」「電車で」の一言を付け加えればトラブルは防げたわけです。

【発達障害への理解を】
この間NHKスペシャルなどで発達障害をめぐる最新の医学情報などが取り上げられ始めている。企業側も、家族も、本人も、よく理解することから始めなければならない。そして、障害者が最も不安に感じているものが経済的支援である。この数年の間に障害年金の認定基準も大きく変わっているにもかかわらず、医師も、年金相談にあたる者も意外と知らない。その結果、生活困窮に陥っている障害者も多く、それが病状悪化の原因にもなっている。
障害者問題は、単なる雇用率という数字では解決しない。
2017年5月

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