時言

ヤマト運輸への是正勧告と異例の労使合意

昨年11月、ヤマト運輸のドライバーに対する長時間労働と残業代未払いがあったとして、横浜北労働基準監督署が是正勧告を出していたことが発覚した(勧告自体は昨年8月に出されていた)。同社に対しては以前にも是正勧告が出されており、残業代未払いの裁判も起きている(和解したようだが)。同社は7万人を超える全従業員の残業実態を調査し、過去2年分の残業代未払い分をすべて支払うとしている(まだ一部未解決のようだが)。
その後、労働組合が荷物量の抑制を要求し、今春闘における最大の交渉課題となった。そして異例の労使合意が締結された。その主な内容は。

○宅配便の時間帯指定区分を見直し、正午~午後2時を廃止。午後8時~9時をやめて午後7~9時を新設
○再配達の受け付け締め切りを1時間早めて午後7時にする
○大口顧客との契約内容を見直し、取扱数量を適正化する
○年間の総労働時間計画を前年より8時間減らし、2448時間にする。労働時間の管理を入退館時間に一本化する
○営業所単位の休憩の時間帯を決める。年間126日以上の休日・休暇を確保する
○週1「回程度のノー残業デー取得、10時間の勤務間インターバル規制を導入する
○ドライバー1人当たりの賃金を月2,621円アップし、ベースアップも月814円行う

あわや「ブラック企業」と言われかねない事態から、一気に話題をアマゾンや今日のサービス業のあり方へと別方向に国民の関心を向けさせた。企業名も公表され、一気に採用に響きかねない事態を、経営陣がいち早く対応した背景にはこうした事情があったのであろう。
ファミリーレストランのロイヤルホストがこの1月までに24時間営業をやめた。ロイヤルホールディングス社によれば、「定休日も考える」という。百貨店が定休日を増やす方向にあるようだが、外食産業も深夜営業を減らす流れが生まれつつある。

これらの背景には深刻な人手不足とミスマッチがある。2017年1月の有効求人倍率(1人当たり何件の求人があるか)をみると、宅配サービスなど自動車運転2.38倍、介護サービス3.53倍、接客・給仕3.77倍、建設3.83倍。東京の保育士の求人倍率は実に5倍を超えている。これらの業種は人手を確保するのが極めて難しくなっているのである。深夜営業をやることによるコストが、人手を集め支払うコストに見合わなくなっているということだ。
そうすると、果たして24時間営業のコンビニ業界はどうなるのだろうか。個人事業主の労働力を頼りにしたフランチャイズ方式であるゆえに、労働問題としてはなかなか問題にならないが、実態はかなり深刻である。
消費者であるわれわれも、外食や宅配などのサービスを、いつでも自由に享受できることに甘んじてはいられない時代になりつつあるようだ。
2017年3月

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