時言

DeNA炎上とフリーランス

【DeNA炎上とクラウドソーシング】
昨年末、DeNA社が運営するキュレーションメディア「WELQ」に、荒唐無稽な医療情報や、他サイトから無断転用の疑いのある記事が乱発され、集中砲火を浴び、同社の10媒体すべての運営を停止、記事が非公開となった。DeNAの株価にも影響を与えているという。
この仕組みには、「新しい働き方」といわれているクラウドソーシングで集められた大量の外部ライターが組み込まれていた。クラウドソーシングは、仕事を発注する企業とフリーランスで働く個人をマッチングする場としてインターネット上に設けられている。サイトを開けば、ホームページ作成、イラストやデザインの仕事など、個人で請け負える仕事が価格も様々に提示され、メールアドレスやパスワードの設定などを行えばその場で仕事を受けられる。

【「雇用関係によらない働き方研究会」】
経済産業省は昨年11月、フリーランス人材の活用に向けた「雇用関係によらない働き方研究会」を立ち上げた。時間や場所にとらわれず、仕事内容も自分次第の「自由さ」にあこがれる声がネット上であふれている。クラウドソーシング運営社ランサーズの資料によると、副業や兼業も含めたフリーランスは昨年で1064万人、前年比で17%も上昇したという。
介護離職者が年間10万人、出産で仕事を辞める女性が就業女性全体の6割、保育園に落ちたシングルマザー、子どもや配偶者の病気で外勤できない人、自身の体調、家族の外勤など様々な状況の人がいる。20年後には生産年齢人口(15~64歳)が2013年比で1000万人減少すると推計されているもとで、フリーランスの働き方は、国にとっても、企業にとっても、そしてこうした事情に置かれた人たちにとっても願ってもない話のようにみえる。

【もっとも悲惨な非正規労働者になる危険】
「月収20万円以上を稼いでいるクラウドワーカーは79.5万人中111人」。昨年2月に公開されたクラウドソーシング大手クラウドワークスの決算資料の数字だ。実に0.014%しか「食べていける人」はいない。
原稿料は、高くて1文字0.5円。仮に2000字の記事を2時間で書けば、時給は500円。最低賃金を大幅に下回る。雇用関係になければ、労働時間の規制も、有給休暇も休日の保障もない。食べていくためには「電通」の働き方を大幅に超える長時間労働をしなければならない。このままではフリーランスはもっとも悲惨な非正規労働者になりかねない。
雇用関係を保ちながら、社会保障制度にも加入させながら、自宅で勤務するなどの働き方ができないわけではなく、実際そういう制度を導入し始めている企業も生まれている。単純なフリーランス賛美の喧伝に騙されてはならない。

2017年2月

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