時言
総労働時間の上限を法で規制
日本を代表する企業の1つである電通の過労自死事件を大きなきっかけに、長時間労働に対する規制の在り方が議論されてきた。それに対する一定の結論がこの度出されたようだ。
【一定期間内の総労働時間の枠】
1月23日に行われた厚労省「第6回仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」に出された「論点の整理案」は、「各企業の自主的な取組に任せるだけでは限界があることから、36協定における時間外労働規制の在り方について、法改正を検討する必要がある」、「労使協定で定める範囲内で、割増賃金を払えば上限なく時間外労働が可能となる現在の仕組みを改め、一定期間内の総労働時間の枠を定め、その枠の中で健康を確保しつつ効率的に働くことを可能とする制度への転換を指向すべきである」とした。
「一定期間内の総労働時間の枠」とは、一体どのぐらいの「一定期間」で、「総労働時間」とは何時間かはまだ不確定である。「1日や1週などの短い期間を単位に労働時間の上限を規制する」のは難しく、かと言って「短期間に過度に時間外労働が集中して健康を損なうこと」があってもまずいと述べている。およそ「月80時間までの時間外労働」という過労死基準が規制対象となるのであろうか?
現在の労働時間規制は、「週40時間、1日8時間」という法定労働時間がありながら、36協定を結べば「月45時間」などの時間外労働が許され、さらに特別条項付き36協定を結べば上限なく労働させられるという三重構造となっている。これが事実上の過労死を招く“ザル抜け規制”と呼ばれる所以であった。少なくともそれに対する一定の歯止めを法的規制として出されることは第一歩といえよう。
【企業に押し付けられたテーマ】
一方、EUが取り入れている「インターバル規制(1日単位の休息期間の確保)」は「企業自らがこれを導入することを促していくべきである」と企業の自主的取組課題とされた。また、「長時間労働が避けられない業種・職種」について「上限規制だけでは解決しない」として例外として扱おうとしているようだ。
今後、各企業にも多くの課題が与えられている。「論点の整理案」でも、「現場マネージャーの育成と組織的なサポート」「業務プロセスや人事評価制度」「『労働時間等設定改善委員会』の設置等、労使による取組の促進」「重層下請構造の下での、急な仕様の変更や短納期発注等(の改善)」「顧客の要望に対し、際限なくサービスを提供してきた(システムの改革)」などが提案されている。
今回の法規制にとどまらず、長時間労働是正の方向へ、それぞれの企業と日本社会が進むことを切に願うものだ。
2017年1月