時言

長時間労働の是正と労働生産性

【経営者の中に危機感】
日経新聞12月8日付けに掲載された「社長100人アンケート」によれば、経営者の8割弱が長時間労働の「是正に着手した」と回答した。
「労働力人口減少が避けられないなか、企業競争力の維持には働き方改革が急務であるとの危機感が浮き彫りになった」と報じられている。
取り組み内容(複数回答)は、「管理職の意識改革」(8割強)、「ノー残業デーの設定」((8割弱)、「フレックスタイム制度の導入・拡充」(7割)、「ITを活用した業務効率化」、「研修などによる従業員の意識改革」、「サービス残業の撤廃」、「残業の事前許可制の導入・徹底」(いずれも6割強)などのようだ。

【「日本人は効率的に非効率なことをする」】
日経新聞出版社発行の『労働時間の経済分析』(山本勲・黒田祥子著)は、欧州で働く日本人管理職の方が、日本の職場での典型的な働き方を揶揄して「日本人は効率的に非効率なことをする」と述べていたことを紹介している。
「効率的な非効率なこと」とは、「資料を留めるホッチキスの角度まで決まっていたり、内部の人間しか読まない資料もフォントやレイアウトを変えたりして時間をかけて美しく変えたり」する日本の仕事の風景を指している。日本人の労働時間当たりの生産性が欧米諸国と比べてかなり低いことに焦点が当たり始めている。

残業をなくし労働生産性をアップさせるための様々な取り組みもマスコミで取り上げられ始めた。
(1)「無理な受注やサービス提供をしない」と決意して3ヵ月で残業をゼロにし、従業員に残業1時間分の基本給アップを図った会社(中里スプリング製作所・群馬県)、
(2)いままで時間に関係なく新規顧客の開拓数など目標達成度で評価していたシステムを変え、評価基準の2割を「限られた時間内で生産性を上げるための取り組み」に振り分け、部署ごと支店ごとに退勤時間を決めて互いの業務を補い合い、チームとして業務の効率化に取り組んでいる山形銀行など。

【労基署ショックがビジネスモデルを崩壊させる】
週刊ダイヤモンド12月7日号は、「労基署が狙う」という特集を組んだ。
電通過労死事件が大きな社会問題となり、労働基準監督署の体制が強化されてきているもとで、従来の働かせ方、ビジネスモデルが崩壊するという警告である。
真剣な検討を開始しなければならない時代になってきていることは確かである。

2016年12月

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