時言

年金法改正とアベノミクス

【年金10年法施行】
改正年金機能強化法が全会一致で成立し、年金の受給資格期間が25年から10年に短縮される。
消費税10%の増税を待っていてはいつになるかわからない状況を踏まえ、2017年の9月から(給付は10月から)実施される。

これによって年金納付期間が10年から25年までだった約65万人の、従来保険料掛け捨てであきらめていた人が救済される。
しかし、10年納付していた人がもらえる年金は、老齢基礎年金でわずか月額2万6千円に過ぎない。
すでに欧米諸国の多くは、受給資格期間が3年とか、せいぜい10年となって久しいのだから、時代から一歩遅れた改革に過ぎない。

【年金カット法】
一方、政府は公的年金の改定ルールを盛り込んだ国民年金法等改定案を提案している。
この法律は、
①物価が上がっても賃金が下がれば賃金に合わせて年金を削減する、
②すでに実施されている年金抑制システムである「マクロ経済スライド」の調整率が完全実施できなかった場合に、調整率(年金減額率のこと。政府は減額率を年1.2%と試算)を繰り越す「キャリーオーバー制度」を導入するという内容である。

仮に、物価が2%上がっても賃金が1%程度なら年金の伸びはほぼゼロになり、賃金がマイナスの年があれば、「賃金のマイナス率+キャリーオーバーによるマイナス率」の合わせ技による減額となる。
つまり、年金額の自動カット法である。

【100年安心プランの崩壊】
2004年に政府が打ち出した「年金100年安心プラン」は、もともと毎年2%以上の物価・賃金増が前提で、物価・賃金が減少することを想定していない「プラン」だった。
すでに黒田日銀総裁はこの間物価2%アップを断念すると記者会見した。
賃金も、27年度の名目賃金で0.2%マイナスとなっている。「年金プラン」はアベノミクスとともに破たんしつつある。

【時代の変化に対応した抜本改革が必要】
国民年金制度が始まった昭和36年(1961年)当時の男性の平均寿命は65歳、現在は81歳。
平均寿命が大幅に伸びれば、年金給付額も増える。

一方で、出生率は「2」を上回る時代から、現在「1.43」(平成25年)と大幅に低下している。
「騎馬戦型」から「肩車型」へと移り変わってきた。
この時代の大きな変化に対して、年金制度の改革は見通しのない減額方式に終始していてはならないはずだ。
すでに65歳以上の高齢者世帯の「総所得に占める公的年金・恩給の比率」は年々減少し始めている(平成22年度70.2%→平成24年度68.5%)。

最低保障年金制度の導入も含めた抜本的改革が待たれる。

2016年11月

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