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電通「過労自死」事件と法的規制

1.電通に入社して1年に満たない女性社員高橋まつりさんが、昨年末に都内の女子寮で自殺し、三田労働基準監督署が9月30日労災認定した。
高橋さんの1ヵ月の時間外労働は約105時間と認定されている。
報道されている高橋さんのSNSによるメッセージは、
「生きているために働いているのか、働くために生きているのか分からなくなってからが人生」
「土日も出勤しなければならないことがまた決定し、本気で死んでしまいたい」と痛々しい。
ハラスメントがあった様子もうかがわれる。

東京労働局と三田労基署は電通本社に立ち入り調査に入り、関西、京都、中部の3支社にも各地の労働局が一斉に調査に入るという異例の動きである。
電通は、すでに1991年、2013年に過労死事件を起こしており、今回で3人目。
さらに、昨年8月に本社で労働基準法違反の是正勧告、一昨年には関西で同様の是正勧告を受けていたというのだから、あいまいな解決では済まされない。
1つの企業で3人も相次ぐ過労死を起こしているわけだから、それなりの罪の償いが必要だ。

2.問題は電通だけではない。関西電力の男性社員が4月に過労自死している。
この男性社員は高浜原発の運転再開を目指すための業務に就き、月200時間を超える時間外労働であった。
フィリピンの実習生(27歳)が2014年4月に心疾患のため死亡し、月78~122時間の時間外労働があったとして今年の8月に労災認定された。
「過労死白書」が出たばかりの相次ぐ事件は皮肉である。
もともと脳心臓疾患と精神障害に伴う労災認定は、平成27年度でそれぞれ100件近くあるわけだから、遺族の意向その他の事情で明るみに出ていない事件も数多い。

3.日本の「カロウシ」が国際的に通用する用語となっている、その汚名の原因は、時間外労働に対する規制がざる抜けになっているためだ。
「1ヵ月45時間まで」という時間外労働に対する規制はあくまでも行政通達でしかなく、「特別条項付き36協定」を結べば上限規制はない。
さらに言えば、この間政府は、労働時間に関する規制を緩和する方向を打ち出してきた。
厚生労働省は、原発再稼働のための業務については残業規制を撤廃するとの通達を出していたわけだから関電過労自死事件に対してどのような責任をとるのだろうか。
また、高度プロフェッショナル制度による残業規制廃止制度の案についても、少なくとも電通社員の労働者の一定数は年収要件が該当すると思われる。
企画業務型裁量労働制(いわゆるみなし労働時間制度)の対象に営業職なども含めるとしているが、過労自死した高橋さんなどの例はその対象となる案である。

4.やはり、EU並みのインターバル規制(終業時間と始業時間との時間に関する規制)も含めた時間外労働に対する法規制は過労死問題解決の最低限の条件とならざるを得ない。

2016年10月

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