時言

一橋大生自死事件とLGBTへの無理解

【一橋大生自死事件とは】
一橋大学法科大学院の学生が、同性愛であることを同級生にLINEでバラされ、パニック発作を起こし、2ヵ月後に自殺したことが報じられた。
遺族はその後、暴露した本人と、適切な対応をとらなかったとして大学を提訴した。現在係争中である。

セクシュアリティーの暴露が人を死に追いやるほどの凶器であることを示す事件である。
同時に考える必要があるのは、大学の対応の何が問題にされているのかである。
アウティング(プライバシーの暴露)した人間と毎日顔を合わせることが発作を引き起こす原因となっている以上、クラス替えなどの適切な措置をとるべきであったにもかかわらず、ハラスメント相談室のカウンセラーは「性同一性障害」を専門とするクリニックへの受診を勧めるという的外れな対応を行っていたようだ。

結局、“そんなことで発作が起きる?”という無理解あるいは軽い受け止めであったことが背景にあるように思う。

【LGBT層は7.6%】
LGBTとは同性愛者のレズビアンやゲイ、両性愛者のバイセクシュアル、性同一性障害者のトランスジェンダーの頭文字を略した用語。
株式会社電通の「電通ダイバーシティ・ラボ」による「LGBT調査2015」(69,989名対象)では、LGBT層に該当する人は7.6%だという。
労働組合の中央組織・連合が全国の20~59歳の男女1千人にインターネットで聞いたところ、8.0%がLGBTの当事者だった。およそ12、13人に1人がLGBT該当者となる。

この数字は日本人の中に占める左利き、AB型の血液の人と同じ比率である。会社の中にごく普通に存在して当たり前の数である。

電通の2012年の調査では5.2%がLGBT該当者との結果だったが、今回大幅に増えている。
最近の社会情勢の変化の影響もあり、いままで匿名調査でさえ答えなかった層が正直に答え始めたといえる。
渋谷区で「同性パートナーシップ条例」が成立するなど、日本においても認知・理解は深まりつつあるものの、世界水準からみるとまだまだ遅れている。
企業にとっても新たな認識を持った対応が求められている。

【厚労省のセクハラ指針でもLGBTを明記】
一橋大学がアウティングをハラスメントと認識せずに対応をしたことが、裁判の被告となる理由となった。
厚労省も、今後こうしたことがないよう、平成29年1月から施行されるセクハラ指針にLGBTも対象とすると明記した。 

従来、LGBTへのセクハラがあった場合、事業主は加害者の配置転換や処分など適切に対応せず、被害者の主張が相手にされないまま泣き寝入りするケースが少なくなかった。
今後こうした対応は許されない。

2016年9月

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