時言

第三者(委員会)は隠れ蓑か?

最近、第三者の役割が問われる事件が相次いでいる。

一つは、舛添都知事辞任劇。
舛添氏は金銭疑惑の追及を一時逃れるため、「第三者の厳しい目」で調査するとして、ヤメ検弁護士佐々木善三氏に依頼した。
佐々木氏の「不適切だが違法ではない」という報告は、「事実認定が舛添寄りだ」と逆に火に油を注ぐ結果となり、舛添辞任という事態となった。

もう一つの事件は、福島第一原発事故で、東電が「炉心溶融」を隠し続けた理由に関する第三者委員会報告である。
「官邸側の要請を受けたと(東電が)理解していたものと推認される」と、官邸側の言い分の聞き取りもないまま発表し、「東電寄り」という批判を呼んだ。
この時も佐々木善三弁護士が加わっていた。

【第三者(委員会)のあるべき姿勢】
本来、第三者(委員会)の役割とは、不祥事を起こしたものの信頼を回復し、存続させるための道筋を示し、再生させるためのものであるはず。
そのためには、直接依頼者から頼まれた事項ではなくとも、必要な調査を尽くさなければならない。
そうでなければ、依頼者寄りとの批判を招き、結果的に依頼者に対して厳しい批判を呼ぶことになる。

かつて牛丼のすき家がワンオペなど過酷な労働をアルバイトに強いる中で、次々退職者が生まれ、相次ぐ店舗閉鎖に追い込まれことがあった。
このときすき家の社長は第三者委員会に依頼し、第三者委員会は全面的調査を行い、経営陣の中にあった体質までメスを入れる報告書を発表した。
第三者委員会とはこうあるべきという感動を覚えたものである。

対照的だったのは、東芝の不正会計問題で第三者委員会報告である。
東芝の不正会計の背景にあった米原子力大手ウエスチングハウス買収処理をめぐる問題や、歴代3社長が激しく利益を求めた動機についてメスを入れることはなかった。

こうしてみるとブラックな依頼者はブラックな専門家に依頼し、ブラックな専門家は第三者(委員会)を隠れ蓑としてブラックな依頼者寄りの調査報告をする。
ブラックの悪循環である。

【専門家の原点も問われている】
6月20日付け朝日新聞(朝刊)に「社労士へ指導相次ぐ」という記事が掲載された。

「不適切なネット発信を巡っては、愛知県の社労士が『社員をうつ病に罹患させる方法』と題したブログ記事を掲載し、2月に厚労省が3カ月間の業務停止処分にした。その後も、厚労省や各地の社労士会への苦情が相次いでいるという。」
昨年11月ごろから今月(6月)15日までに18都府県の97人の苦情が寄せられたとのこと。
「労働社会保険料を不当に引き下げることを推奨する」「『100%会社側』と公正さを疑わせる」「厚労省のモデル就業規則を否定する」などの事例が列挙されている。

われわれ自身が何のための国家資格なのか、その原点を見失わないようにしなければならない。

2016年6月

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