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パナマ文書の衝撃

パナマ文書、租税回避地(=タックスヘイブン)の暴露文書が4月4日未明(日本時間)世界に暴露され大騒ぎになっている。

パナマ文書とは、パナマのモサック・フォンセカ法律事務所が1970年代から作成した1,150万件に及ぶ膨大な文書。
匿名で昨年ドイツの新聞社「南ドイツ新聞」に漏らされ、それがワシントンD.Cにある国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に送られ、世界の400名のジャーナリストが文書の分析にかかわっているようだ。
関連企業・個人リストの完全版は5月に公開される予定である。

【世界に与えた衝撃】
いまわかっているだけで、約140人の政治家や官僚、国家の現旧指導者の親族61人の名前が挙がっている。
イギリスのキャメロン首相も税逃れの責任が問われており、アイスランドの首相は責任を問われ辞任している。
中国の習近平主席の義兄も関係していたとされ(ただし、中国の報道規制で中国国内では一切の情報が消えている)、ロシアのプーチン大統領は3人の友人の名前が文書に出てくる。
日本人も約400人分の名前があったといわれ、完全版の公開が待たれる。

【闇は深い】
世界の1%の富裕層が全世界の富の半分を占めていると言われている。
パナマ文書で明るみに出たことは、富裕層が自国の政府に税金を取られることを避けて、所得税、法人税などが無いか、異常に安い国に、ペーパーカンパニーを設けて資金を移していた実態である。
支払われていない税金は28兆円に及ぶという。
しかも、タックスヘイブンといわれる地域は全世界に30に及ぶとされており、スイスの金融センターなど含めれば膨大の量が散らばっている。
そのわずか一つの地域でこれだけ問題になっているわけだから、闇はかなり深い。

【何が問われているのか】
先進国における格差の拡大を、3世紀にわたる統計資料によって裏付けたフランスの経済学者トマ・ピケティ(『21世紀の資本』著者)は、
「パナマ文書が明らかにしたことが何かというと、先進国と発展途上国の政治・金融エリートたちが行う資産隠しの規模がどれほどのものかということだ」、ところが各国政府によって「何もなされてこなかった。ある面では事態は悪化している」と指揮し、「欧州では税の引き下げ競争の結果、大企業の利益に対する課税の税率がこれまでにないレベルになった。…英国は課税率を17%にまで引き下げようとしている」と述べている(朝日新聞4月20日)。

大企業に対する税の引き下げの歴史と資産隠しは一体のものとみるべきだろう。

そもそも税金とは、国家が所得ある者からより多く課税し国家の必要施策に使う、とりわけ所得の少ない者へ再配分する、この再配分機能こそ本来の姿というべきだろう。
タックスヘイブンを問題にすらしない各国政府の態度が、いま厳しく批判され始めている。G7なりG20なりで国際的規制も含めて対応しなければならない。


2016年4月

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